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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)278号 判決

事実及び理由

一  請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。

二  そこで、原告主張の、本件審決を取消すべき事由の存否について判断する。

1  手続が違法であるとの主張について

成立に争いのない甲第四号証及び第五号証によれば、本件審判請求に先立ち、原告が受けた拒絶査定には、定型用紙を使用して引用例の外一点の刊行物を含むものに記載された考案に基づいて極めて容易に考案することができたとする昭和四九年六月七日付拒絶理由通知書に記載された拒絶理由を支持し、さらに備考欄に、「ビニール、ポリエチレン等の化合物から構成された人造の管は従来極めて周知の事実である。そして上記周知の人造の管に引用例に記載されたような一定の間隔の節を設けることは当業者が極めて容易になし得たものと認める。」と特に理由づけが記載されており、審判請求後の手続段階において、前記周知事実について意見を述べる機会とともに本願明細書を補正する機会も与えられていたものであることが認められるから、前示争いのない「ビニール、ポリエチレン等の化合物から構成された人造の管が周知である」旨を理由づけの一半とした審決の前提に何ら手続の違法はなく、この点に関する原告の主張は理由がない。

2  進歩性の主張について

(一)  原告主張(一)の効果について

ビニール、ポリエチレン等の合成樹脂が耐腐蝕性を有することは此の種材料の物性として原告も自認するとおり周知であり、成立に争いのない乙第一号証ないし第三号証及び弁論の全趣旨によれば、合成樹脂管を農業園芸用支柱として使用することも、本願考案前周知の技術である。以上の周知事項を考慮し、成立に争いのない甲第二号証、第三号証を検討すると、引用例のような鉄パイプの外周にプラスチツクを被覆したものに代えてこれを合成樹脂だけで構成することは当業者が極めて容易に推考できるところであり、この構成によつて耐腐蝕性を具備することも予測可能であつて、格別顕著な効果であるとは認められない。

(二)  原告主張(二)の効果について

前掲甲第二号証及び乙第二号証並びに弁論の全趣旨によれば、中空の水道用、電線用、乾干用ビニール管又は鉄管の廃棄物を農業園芸用支柱として転用することは、広く慣用されていて周知の事項であり、また、その場合、上下端が開放されているとこれらの管内の空気の流通がよく、帯熱を防ぎ、その程度に応じて、支持される作物に対する熱による悪影響を防止することができることも周知事項であることが認められる。

そうして前掲甲第二号証、第三号証によれば、引用例の支柱においてその上下端のキヤツプを取除いたものである、支柱本体を中空状のものとして構成すること、そしてこれによつて帯熱防止の効果を収めることも極めて容易に予測できたものであつて、格別顕著な効果ということができない。

(三)  原告主張(三)の効果について

前掲甲第二号証、第三号証、乙第一号証ないし第三号証に弁論の全趣旨を総合すると、古くから農業園芸用支柱として利用されてきた自然竹あるいは自然木は、本来先細、元太であり、自然竹においては適当間隔の節を利用して蔓類の滑り止めとしてきたことも従来周知の事項である。したがつて人造支柱を製作するに当り、先細元太にすることは、適宜当業者が極めて容易に実施できることであり、その構成による効果も当然予測できるところであつて、格別のものとすることはできない。

(四)  原告主張(四)の効果について

前記認定のとおり、合成樹脂管を材料として農業園芸用支柱に使用することが周知の技術であり、また弁論の全趣旨によれば、ビニール等の熱可塑性合成樹脂製品の廃物を再利用して種々の再生品が作成されていることも周知である。したがつて、前掲甲第二号証によれば、材料の選択に基づいて主張する廃物利用等の効果もその材料の属性から当然予測できる範囲のものに過ぎず、顕著なものとすることはできない。

三  そうすると、本願考案が引用例に記載されたもの及び周知事項から当業者が極めて容易に考案することができたものとした審決の判断に誤りはなく、原告の主張は、いずれも認めるに由ない。したがつて本件審決を違法としてその取消を求める本訴請求は、失当として棄却すべきである。

〔編註〕本願考案に関する事項は左のとおりである。

一  特許庁における手続の経緯

原告は昭和四六年六月二二日、名称を「農業果菜用人造竹」とする考案(以下「本願考案」という。)につき、実用新案登録出願(昭和四六年実用新案登録願第五三二五七号)をしたところ、昭和五〇年三月一一日拒絶査定を受けたので、同年四月八日審判を請求し、昭和五〇年審判第二九八一号事件として審理されたが、昭和五五年八月五日「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は同月一三日原告に送達された。

二  本願考案の要旨

ほぼ一メートルから四メートル位までの長さのビニール、ポリエチレン、プラスチツク等化合物による人造の管に一定の間隔の節をつけ、一方を太く、他方をやや細くして用途に応じ最適に竹状にしたもの。

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